配当弁済と遅延損害金の扱い

同じく相続財産管理人業務に当たられている
実務家の先生より指摘頂いたのが、
「相続財産管理人の配当弁済の際に
遅延損害金をどのように扱うか」という点。
確かにあんまり意識しない部分かもしれません。
(担当の書記官さんに相談してみたところ
「よくわからない。」とのご回答だったとのこと)

ちなみに、私が過去に行った配当弁済の場合は
どの債権の申出も元金部分だけだったので、
この点が問題になることはありませんでした。

調べたところ、この点に関しては、
ピタッとはまる裁判例等は見当たらなかったのですが、
司法研修所編「財産管理人選任等事件の実務上の諸問題」(法曹会)69頁に
以下の様な記載がありました。

「(配当弁済の基礎とする)債権額とは、
元本額、利息額、遅延損害金のいずれまでを含むか、及び
その基準時に関する実務上の取扱いは一定していない。」
「実務のおよその取扱いは元本額を
按分比例して配当することが多いようであるが、
配当日までの利息金、遅延損害金を加えた額を按分比例して
配当することもないわけではない
。」


sukkiri.png



家裁書記官向けのマニュアル本で
「実務上の取扱いは一定していない」と言い切る
その潔さは我々も見習うべきところがありそうです。

結局、いつも通り
「スッキリしない問題である
ことがわかってスッキリした」
という感じですが、
さて、実際はどうしたもんでしょうか。

統一的な取扱いという点では
申出のあった全部の債権について
元本のみを基礎とするか、あるいは利息・延損も乗せるか
いずれかに取扱いを統一した方がいいのかもしれませんが、
わざわざ申出のある延損を削ったり、
逆に申出がないのに利息・延損を乗せたりというのは
大きな違和感を感じてしまいます。

破産の場合だと届出のない延損等を
わざわざ計算して配当額算定の基礎にしたりといったことはしないわけですから、
相続財産管理の場合も
届出があれば基礎額に含め
無ければ無いまま元本のみを基礎にすればええんじゃないか
というのが私の意見です。
(主張もされていない延損について
わざわざ管理人が算定して
基礎額に入れるなんてのもバカっぽい話ですし。)

enson


ちなみに、ちょっと思ったのが
「延損を乗せるとしても
弁済拒絶期間の分はどうすべき?」
という点。

ご存じのとおり、相続財産管理人は
請求申出期間前においては
弁済期の到来した相続債権等の弁済を拒絶でき、
また、原則として拒絶しなければなりません(民法957条2項、同法928条)。
この「拒絶をできる期間」分は延損は発生するのかしないのか。
「弁済を拒むことができる。」(民法928条)っていう条文の意味が
イマイチ明確ではないのですが、
字義通り読むとこの間は遅滞に陥っていない
(=延損は発生しない)とも考えられるのではないかと。

ただ、この期間分の延損を抜くとした場合、
いつから抜くのかとか
理論的にも実務的にもちょっとめんどくさい問題が出てきそうな気がします。

ちなみに、弁済期未到来の債権の場合、
中間利息を控除せずに
債権全額を基礎額とするとされています。
この理由は「管理人が計算面倒だし、控除しなくても
ほかの債権者もそれほど害されないでしょ?」という点にあるという(前掲諸問題70頁)。
これとの対比で考えたら、
弁済拒絶期間分の延損を基礎額に含めても
「ほかの債権者もそれほど害されないでしょ?」と言えそう。
控除額の算定も面倒だし。
なので、この点は無視して良いんじゃないかと
私のリーガルマインドが先ほどから訴えています。

このように、配当弁済については
基礎額をどのように評価するかという根幹のところで
スッキリしない部分があります。
配当弁済は管理人の権限内の行為(=権限外行為許可が不要)であるといっても、
こういうあいまいな部分があるので、
やっぱり配当表原案を作って書記官さんや裁判官と協議してから
弁済を行うというのが正しいやり方だと思います。

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相続人不存在の場合の共有持分の帰属について

例えば死亡した人(被相続人)が他の者と不動産を共有しているという場合で、
被相続人の相続人が全員相続放棄をしてしまった場合
(あるいは元から相続人となるべき者がいなかった場合。)、
その共有持分はどうなるか、という問題。

普通に、実務的に考えた場合には
単純に「相続人の不存在」として
相続債権者や特別縁故者にあたる者から
相続財産管理人選任申立がなされ、
その共有持分が売却されたり、
(担保に供されている場合は)競売されたりということになる。

ところが、若干曖昧な記憶の中から
「…たしか、共有者持分権者が相続人がいない状態で死亡したときは、
その持分は他の共有者のものになるんじゃなかったっけ?」

という心の声が聞こえてきたりする。

この点、民法255条では
「共有者ノ一人カ其持分ヲ抛棄シタルトキ又ハ相続人ナクシテ
死亡シタルトキハ其持分ハ他ノ相続人ニ帰属ス」

という定めがある。

私も、確か法学部の2年次の民法講義で
これを学んだような朧気な記憶がある。
(たしか、箱の中の二つの風船のうち一つが破裂したら、
もう一つが箱いっぱいにまで膨らむという例えとともに。)

この民法255条を字義通りに読めば、
「(元からだろうが相続放棄によろうが)相続人が居なくなったんだから、
その共有持分権は他の共有者に帰属することになるから、
相続財産管理人によって共有持分を売却処分したりする必要は
無くなるんじゃないの?」
とも思えてしまう。

kyouyu.jpg


で、どっちが正しいのかという話だけれど、
結局条文読むだけでは解決できないということで、
この点に関する考え方を判示した以下の判例があります。

「共有者の一人が死亡し、相続人の不存在が確定したとき、
その共有持分は他の相続財産とともに(民法)958条の3の
規定に基づく特別縁故者への財産分与の対象となり、なお
相続財産が残存することが確定したときに初めて、本条が
適用される。」
「法255条にいう『相続人ナクシテ死亡シタルトキ』とは、
相続人が存在しないこと、並びに、当該共有持分が
前記清算後なお承継すべき者のないまま相続財産として
残存することが確定したとき
と解するのが相当である。」

(最高裁判所平成元年11月24日民集43-10-1220)

つまり、民法上は
「相続人が居なかったら、共有持分は
他の共有者のものになるよ!」とは書いてあるものの、
その共有持分権に担保が設定されてたり、
相続債権者への弁済のために換価の必要があったり、
あるいは、特別縁故者への分与の必要があるなどといった場合には、
民法255条によって直ちに他の共有者に帰属するということにはならない

結局、民法255条が意味を持ってくるのは、
本当に最後の最後、
「相続人不存在が確定し、債権者への弁済も
特縁への分与も終わった!ようやく国庫帰属か。」

という段階になってから。

もともと、民法255条後段の立法趣旨
「相続財産が共有持分の場合にも国庫帰属するものとすると
国と他の共有者との間に共有関係が生じ不便」という点
にある。
(前掲判例の判決理由参照)

だから、共有持分権者の一人が死亡して
相続人が居ないという場合であっても、
相続債権者や競売を実行したい担保権者、
特別縁故者にあたる者は、民法255条の規定に惑わされずに
相続財産管理人選任申立を行えばいいということになる。

また、民法255条に基づいて「被相続人名義の共有持分権は
自己に帰属する」として登記手続申請をしたい他の共有者も
相続財産管理人選任申立を行うことになるんじゃあないかと。


…なお、ちょっと心配なのは、
民法255条の上記のような適用場面を理解しないまま、
相続財産管理人が共有持分権を換価して金に変えてしまった場合。
(共有持分権自体、売却するのは結構面倒だけれど。)
この場合、事前に気付けばいいんだろうけど、
気付かずに国庫帰属としてしまう可能性もあるよね。

そうなるとまた財産管理人の善管注意義務違反になりそうな気もします。

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【役立つ!】破産と相続財産管理での任意売却の違い

例えば、破産管財事件でいわゆる「オーバーローン物件」
任意売却しようとする場合、
売却代金の数パーセントを財団組入させるのが一般的な取り扱いです。

オーバーローンということは
担保競売しても担保権者に全額弁済できない状態なわけですが、
そんな場合でも任意売却をすることにより
担保権者にとっては、
①競売手続よりも費用も時間も抑えられる
②(一般に)競売での落札よりも高額での売却が可能となる(回収率が上がる)
③担保不動産のスムーズな明渡しが期待できる

というメリットがあります。

ところが、破産管財人としては、
任意売却をするには、少なくとも、
担保不動産の査定、仲介業者の選定、売り側司法書士との協議、
担保権者(場合によっては後順位も)等との協議、
そして破産裁判所への許可申請が必要となります。
(破産者の意見聴取(破産法78条6項)なんてのもあったりする。)

これらの相応に手間のかかるお膳立てをしても、
「オーバーローンだから(剰余がないから)売れても破産財団には回らないよ」
というのでは、なかなか破産管財人としても
任意売却に対するインセンティブが働かない。
「面倒な手続とるメリット無いなら競売でいいや」ってことになるもんね。

そこで(というわけかどうかしらないけど)
実務では、破産管財事件の任意売却のときには
「たとえオーバーローンでも、任売するなら売却代金のうち
数パーセントは破産財団に組み入れさせなさいよ」とされている。

これによって破産財団としても任意売却により
財団の増殖が可能になるので、
「いっちょやってみようか」という気にもなるわけだ。
また、担保権者も数パーセントの組入をしても競売よりは利益が見込める。
(というか、「組み入れても利益が見込める場合に
任売と組入に同意する」という方が正確か)

じゃあ、この「任売の際の財団組入」って法的根拠はあるのでしょうか?

この点、任意売却自体については破産法78条で定めが置かれてるけど、
その際の財団組入の法的根拠については、
ずいぶん調べてみたけど、少なくとも条文上ストレートな根拠は無いみたい。

なお、「大コンメンタール破産法」(青林書院)では、
「…旧法下の実務では売主である破産管財人、買主及び別除権者の合意により
任意売却、売却代金の別除権者に対する弁済及び担保権の消滅(抹消)を一括
して行い、その際売却代金の一部を破産財団に組み入れて破産債権者に対する
配当の原資とするという運用が広く定着していたといわれており、新破産法の
下でもこのような運用が引き続き行われている。」

とされています。
だから、「なぜ組み入れなきゃいけないの?」という問いには
「そういう運用だから」という答えになりそうです。

ちなみに、大阪地方裁判所では
「不動産の売却価格の5パーセントから
10パーセント程度を財団に組み入れる運用」であり、
どのような事情があっても
実質的な財団組入額が売却価格の3パーセントを下回る
場合には、当該不動産の任意売却は許可しない方針である。」とされています。
(新日本法規「新版破産管財手続の運用と書式」133頁)

個人的には、この「どのような事情があっても許可しない」という強気の表現が、
大阪地裁第6民事部のプロ意識と威圧感が感じられて大好きです。

kumiire.jpg


ともあれ、このように先人の知恵により生み出された
「財団組入」という「運用」。

では、同じように不動産の任意売却が必要となる
相続財産管理人の事件ではどうか?

この点について、家裁の後見・財産管理係の担当書記官に質問したところ、
相続財産管理事件の場合の任意売却では
「相続財産への組入」というのは考えないのが一般的
みたい。
つまり、相続財産管理人としては、
財産自体の増殖は考えずに粛々と不動産の処分を行うということでいいらしい。

まぁ、それでも競売してもらうよりは財産処分は早く進むし、
担保権者としても良い値で売れるわけだから、
人類全体で見るとメリットがないわけじゃないんですが、
どうしても管財人的な考え方が染みついている自分としては
「わざわざ動くのに相続財産にとってメリットないんじゃなぁ…」
とつい考えてしまいます。

そこで、勢い余って書記官さんに
「それって、つまり破産と違って、
純粋に、相続債権者のために、それこそ好意で、
任売をしてあげるということになりますよね?」と聞いたら
「そうですね(笑)」と(^^;)。

破産の場合も「運用」が根拠なんだったら、
相続財産管理の場合も、担保権者と合意して
相続財産に「組み入れ」してもらうという選択も
あって良いように思うんですが、
何かにつけて横並びが好きな純日本人の私としては
家庭裁判所の意向どおりに動くわけです。

なんで破産と財産管理とでここまで運用が違うのかということですが、
一つ考えられるのは、財産管理の場合、破産ほど強烈に
「弁済原資(相続財産)を増殖しなければ!」的な
共通認識が無いからなのかなぁと思ったりもします。
債権者がいる点では破産も財産管理も一緒なんだけどね。

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【役立つ!】相続財産管理人不在の場合の訴訟提起

訴訟を提起したいが、本来相手方とすべき人物がもう死んでしまっているという場合。

相続人がいるときには当然、
相続関係調査の上、相続人に対して訴訟提起すればいいだけのこと。
ところが、相続人がいない場合や相続人が全員相続放棄(民法938条)しているときは?

まず考えられるのが、
相続財産管理人の選任申立(民法952条)
ところが、これは予納金の額も比較的高くなるし(だいたい20~30万円くらい?)、
申立手続自体も結構面倒。
しかも、相続財産管理人選任申立事件自体、
法律上どう頑張っても6ヶ月以内には終わらない手続なので
訴訟とその後の処理(弁済・執行による回収等)もスムーズ・迅速にいかない可能性がある。

なにより、こちらとしては訴訟したいだけなのに、
被相続人本人の資産・負債関係を調査の上、
その処理を任せる管理人選任を申し立てるっていうのが
いかにも不合理な感じがします(俺だけかもしれませんが)。

そこで考えられるのが、特別代理人(民事訴訟法35条1項)の規定で対応できないかってこと。

仮にこれが可能であれば、
相続財産管理人選任の場合よりは低い予納金額(10~20万円くらい?)で対応可能だし、
あくまでその訴訟に関する代理人選任なので円滑・迅速な進捗も期待できる。

もう一つの利点は、
特別代理人の方が訴訟がスムーズに進みやすいってこと。
なぜか?
相続財産管理人と違って、その事件にスポットで選任されてる特代の方が
被相続人に関する情報が圧倒的に少ないので、認否も「不知」が多くなるから。
このことは副次的な要素に過ぎないけど…。

tokudai.jpg

ただ、「本人死亡してるのに『代理人』
っていう概念が成り立ちうるの?」
っていう疑問は当然ある。
(実はこの視点は非常に重要。この疑問がもてないと法律家じゃない。)

ところが、相続人不存在(あるか否か不明の場合も含む。)のときは
相続財産は「相続財産法人」っていう法人格が与えられることになる(民法951条)。
つまり、被相続人自身は死亡してるけれども、「本人」に当たる相続財産法人がいるので
法理論的にも代理人の選任ということが観念できるわけだ。

で、特別代理人の話に戻るけれども、
結論から言うと、明文規定はないものの、
「相続人不明の相続財産」について相続財産管理人がいない場合にも
この特別代理人(民訴35条1項)の規定は準用される

実はそういう大審院決定がある(大審院昭和5年6月28日決定・民集9-640)。

この大決は大抵の判例六法の民訴35条には挙げられてて、
ハデさはないが持ち前の汎用性で弁護士をアシストする縁の下の力持ち的裁判例といえます。

あと、さっきの「視点」の問題。
要するに「相続人不明の相続財産は『相続財産法人』っていう一種の法人」なわけ。
これは相続財産管理人が選任されていると否とにかかわらない。
なので、仮に相続財産管理人が選任されている事案で
被相続人に対して有していた請求権を内容とする訴訟を提起する場合でも
「被告 亡△△△△相続財産管理人○○○○」とするのは誤りで、
あくまでも「被告 亡△△△△相続財産」とするのが正しい。

相続財産管理人が選任されている場合の訴訟提起の際に、
民事部の書記官がうんざりしながら原告代理人に当事者目録の補正を
促している場面はよく見かける光景です。
(自分も一回やってしまったクチです。二度目はありません。
書記官がよく判ってない方の場合、そのまま判決出たりするしね。
この判決、そのままじゃ執行できないような気がするんだけれど…。
こわい話ですよ、ほんとに。

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プロフィール

弁護士中村真

Author:弁護士中村真
神戸の弁護士・中村真(なかむら・まこと)のBLOGです。
かつては複雑な法律問題などをわかりやすい絵で親切に解説しているつもりでしたが、最近はそうでもないです。自宅マンションに鳩が来るのが悩みです。

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