相続人不存在の場合の共有持分の帰属について

例えば死亡した人(被相続人)が他の者と不動産を共有しているという場合で、
被相続人の相続人が全員相続放棄をしてしまった場合
(あるいは元から相続人となるべき者がいなかった場合。)、
その共有持分はどうなるか、という問題。

普通に、実務的に考えた場合には
単純に「相続人の不存在」として
相続債権者や特別縁故者にあたる者から
相続財産管理人選任申立がなされ、
その共有持分が売却されたり、
(担保に供されている場合は)競売されたりということになる。

ところが、若干曖昧な記憶の中から
「…たしか、共有者持分権者が相続人がいない状態で死亡したときは、
その持分は他の共有者のものになるんじゃなかったっけ?」

という心の声が聞こえてきたりする。

この点、民法255条では
「共有者ノ一人カ其持分ヲ抛棄シタルトキ又ハ相続人ナクシテ
死亡シタルトキハ其持分ハ他ノ相続人ニ帰属ス」

という定めがある。

私も、確か法学部の2年次の民法講義で
これを学んだような朧気な記憶がある。
(たしか、箱の中の二つの風船のうち一つが破裂したら、
もう一つが箱いっぱいにまで膨らむという例えとともに。)

この民法255条を字義通りに読めば、
「(元からだろうが相続放棄によろうが)相続人が居なくなったんだから、
その共有持分権は他の共有者に帰属することになるから、
相続財産管理人によって共有持分を売却処分したりする必要は
無くなるんじゃないの?」
とも思えてしまう。

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で、どっちが正しいのかという話だけれど、
結局条文読むだけでは解決できないということで、
この点に関する考え方を判示した以下の判例があります。

「共有者の一人が死亡し、相続人の不存在が確定したとき、
その共有持分は他の相続財産とともに(民法)958条の3の
規定に基づく特別縁故者への財産分与の対象となり、なお
相続財産が残存することが確定したときに初めて、本条が
適用される。」
「法255条にいう『相続人ナクシテ死亡シタルトキ』とは、
相続人が存在しないこと、並びに、当該共有持分が
前記清算後なお承継すべき者のないまま相続財産として
残存することが確定したとき
と解するのが相当である。」

(最高裁判所平成元年11月24日民集43-10-1220)

つまり、民法上は
「相続人が居なかったら、共有持分は
他の共有者のものになるよ!」とは書いてあるものの、
その共有持分権に担保が設定されてたり、
相続債権者への弁済のために換価の必要があったり、
あるいは、特別縁故者への分与の必要があるなどといった場合には、
民法255条によって直ちに他の共有者に帰属するということにはならない

結局、民法255条が意味を持ってくるのは、
本当に最後の最後、
「相続人不存在が確定し、債権者への弁済も
特縁への分与も終わった!ようやく国庫帰属か。」

という段階になってから。

もともと、民法255条後段の立法趣旨
「相続財産が共有持分の場合にも国庫帰属するものとすると
国と他の共有者との間に共有関係が生じ不便」という点
にある。
(前掲判例の判決理由参照)

だから、共有持分権者の一人が死亡して
相続人が居ないという場合であっても、
相続債権者や競売を実行したい担保権者、
特別縁故者にあたる者は、民法255条の規定に惑わされずに
相続財産管理人選任申立を行えばいいということになる。

また、民法255条に基づいて「被相続人名義の共有持分権は
自己に帰属する」として登記手続申請をしたい他の共有者も
相続財産管理人選任申立を行うことになるんじゃあないかと。


…なお、ちょっと心配なのは、
民法255条の上記のような適用場面を理解しないまま、
相続財産管理人が共有持分権を換価して金に変えてしまった場合。
(共有持分権自体、売却するのは結構面倒だけれど。)
この場合、事前に気付けばいいんだろうけど、
気付かずに国庫帰属としてしまう可能性もあるよね。

そうなるとまた財産管理人の善管注意義務違反になりそうな気もします。

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プロフィール

弁護士中村真

Author:弁護士中村真
神戸の弁護士・中村真(なかむら・まこと)のBLOGです。
かつては複雑な法律問題などをわかりやすい絵で親切に解説しているつもりでしたが、最近はそうでもないです。自宅マンションに鳩が来るのが悩みです。

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