代印について

準備書面ではときどき「代印」というものを見かけます。

この代印がよく使われるのは、
複数の事務所の弁護士が共同受任するような事件の場合。

例えばA弁護士とB弁護士が共同受任しているときに、
A弁護士が準備書面を起案して完成させたとする。
このとき、B弁護士の事務所が近くて
提出期限までに十分余裕もある場合には、
A、B両方の弁護士がそれぞれ書面の原本に押印すればいいけど、
そんな時間的余裕が無い場合などには、
AがBの氏名の右側に自分の印を押し、
その右上(ないし右下)に「代」という文字を書いて提出
する。これが代印。

また、大規模な事件で弁護団が組まれているような場合にも
この「代印」は結構活用されているようです。

そもそも、民事訴訟では
「訴状、準備書面その他の当事者又は代理人が
裁判所に提出すべき書面には、…(中略)…
当事者又は代理人が記名押印するものとする。」

とされています(民事訴訟規則2条1項)。

なので、代理人が作成した準備書面上には、
必ず代理人の記名押印が必要となるので、
全ての代理人が押印するのが困難な場合は代印が用いられるということです。

ただ、名前ばっかりたくさん連ねてても、
そのほとんどが代印だと、実際、ほとんど名義貸しだけみたいな感じで、
説得力が無いような気もしてしまいます。
そのためか、結構上の期の先生などは、
共同受任の案件でも代印ではなく、
持ち回りで各弁護士が提出書面に押印することにこだわる方もおられます。

この「代印」については、
ずいぶん調べてみたけれど、
これが民訴規則2条1項の「押印」として認められる
法律ないし規則上の根拠というのは明確ではない
みたい。
(もしかしたら、裁判所内部の通達等で許容されてるのかも。)

厳密な根拠も方式も明確ではないので、
いわゆるビジネス文書における代印の方式ほど
定まったやり方があるわけでもないように思われます。

弁護士の印というのは、
各弁護士会で登録しているきちんとした職印なので、
問題ないということなのでしょうか。

ただ、この代印で注意が必要なのは、
(副委任状など)その性質上本人の押印が不可欠な書面や
刑事訴訟で提出する書面等では
認められない
ので注意が必要です。
(ときどき、主任弁護人がヒラ弁護人の押印を代印で済ませた
書面を提出しようとして裁判所から指摘が入るという話を聞きます。)

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テーマ : 弁護士の仕事
ジャンル : 就職・お仕事

【起案術】じゃあ、どうやって構成すればいいの?(1)

随分前に書いた「起案の構成は死ぬほど大事」という話。
では、具体的にどのように書いて行ったらいいのかという点について、
今回は書いてみたいと思います(相変わらず私見ですが。)。
このテーマについてはずいぶん久しぶりなので、
自分でもどんなことを書いたらいいのかを思い出しつつ…。

前にこういうことを書きました。

「全体の構成を行う中で
記載の要否や順序、各記載ごとの分量(文量)を十分に検討し、
また、実際の起案に際しても
適度な改行や小見出しの活用、
そして事実と評価の峻別といった点を
意識する必要がある」


で、今回以降は構成の各論として
「記載の要否」
「記載の順序」
「各記載ごとの分量(文量)」
「適度な改行や小見出しの活用」
「事実と評価の峻別」
について順に書いてみたいと思います。

で、まず今回は「記載の要否」について。

訴状でも、答弁書でも、準備書面でも、
およそ主張書面においては、
「書く必要があることは書かなければならないし、
書く必要がない事項は書いてはいけない」

というルールがあります。

そんなことは当たり前じゃないかと普通は誰でも思うわけですが、
これが守られていない起案というのは非常に多い。


まず、「書く必要があるのに書かれていない」というケース。
これは、端的に要件事実に該当する事項が
全く主張書面から抜け落ちているという場合が考えられます。
それには、そもそも要件事実の主張自体がない場合
(いわゆる「主張自体失当」)もあれば、
事実の主張はあるけれども
それの裏づけとなる具体的事実が記載されていないという場合もあります。

もっとも、
パンツ履き忘れて裁判所に行く弁護士がそう多くないのと同じように、
この「書き漏らし」の方は、
弁護士としての判断能力や知識、情報リテラシーが正常でありさえすれば
比較的気付きやすい(犯しにくい)ミスであるといえます。

また、要件事実が抜け落ちている起案というのは、
たとえば訴状なら補正命令(民訴法137条1項)がなされますし、
準備書面でもどこかの段階で裁判官・担当書記官から何らかの指摘が入ります。
(これは「ありがたいこと」ではなく「恥ずかしいこと」です。)

さらにいえば、必要な事実の主張がなされていないっていうのは、
「起案の読みやすさ」以前の問題であるとも言えます。


むしろ「起案の読みやすさ」という点でより多く問題となるのは
逆のパターン、つまり「書かなくていいことを書いている」というものです。
これは、「本当に伝えたい内容が余事記載に埋もれてしまう」というだけでなく、
起案全体を無駄に長くしてしまうため、
「起案の読みやすさ」という点では致命的です。

この点、弁護起案を行う上で、
「この予備的抗弁は出すべきだろうか?」
「この反論の事実や証拠の存在を今の時点で指摘すべきだろうか?」

と悩む場面は結構多くあろうかと思います。
このレベルの悩みは、知識と経験に基づいて適切な解決を出せることが多いですし、
ここでの判断の誤りそれ自体が「起案の読みやすさ」
直接影響する場面というのはそう多くないのではないか、と私は思います。

他方で、「起案の読みやすさ」に深刻な影響を及ぼす余事記載というのは、
大きく分けると以下の2つに集約されるような気がします。
(1)主要事実でも事情(間接事実・補助事実)でもない
 なんの意味があるのかわからない記載
(2)主要事実か事情のいずれかには当たりそうだが、
 証拠・根拠に基づいていない、あるいは書く必要が極めて乏しい記載

まず、(1)に関してですが、
私は、原則として主張書面の部分では
主要事実(要件事実)、間接事実、補助事実のみを記載し、
これらのいずれにも関連しない事項は書くべきではない
と思っています。

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なぜなら、これらに関連しない事項は
民訴法や民訴規則上も、書面に記載されることが
予定も期待もされていない
からです。
また、そもそもそのような記載は立証の上でも全く無意味です。
(逆に言うと、「立証上意味がある」のであれば
間接事実や補助事実に該当するはずです。)

具体的な例を挙げると
・争点と関係ない事実関係の説明をダラダラと書く
・相手方の訴訟態度について大々的に批判を展開する
などです。

この点、数少ない例外として、和解協議のための参考事項(資力の有無等)を
準備書面にいわば予備的に記載するということはありうるのかな、と思います。
(とはいえ、最近の消費者金融のこのテの
「泣き落とし的記載」のしつこさにはどうかと思いますが…。)

それから、(2)に関して言うと、
たとえばよくあるのが
・代理人の憶測の域を出ないストーリーを展開
・出所のはっきりしない伝聞の話を間接事実として記載
・極めてマイナーな(あるいは社会的コンセンサスの有無が不確かな)
 事項を「公知の事実である」と強弁
などでしょうか。
また、裏付け・根拠となる資料が存在する事実の主張であっても、
そのような資料が証拠として提出されていない場合には
結局は余事記載です。
証拠が提出されていない以上、判決の基礎には成り難いという意味では
先の例と変わるところがないからです。


このような余事記載は「起案の読みやすさ」にも悪影響を及ぼすものですが、
結局は、「争点や要証事実を正しく理解・選別できていない」という印象を
読み手(裁判官・相手方代理人)に与えてしまうことになり、
結果として起案者自身の評価を大きく下げさせてしまうことにもなりかねません。
(実は、依頼者の意向もあって余事記載を余儀なくされるというケースもあり、
そういう場合においてはなかなか難しいところですが…。)

なので、起案の構成を考える上では、
まずとっかかりの部分で、
「この記載は書かなくていいのか?」
「本当にこの記載は必要なのか?」

ということを充分に検討する必要があるのです。

これが終わったら、次は
「どのような順番で記載していくか」の検討に入ることになります。


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弁護士中村真

Author:弁護士中村真
神戸の弁護士・中村真(なかむら・まこと)のBLOGです。
かつては複雑な法律問題などをわかりやすい絵で親切に解説しているつもりでしたが、最近はそうでもないです。自宅マンションに鳩が来るのが悩みです。

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