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ヒラメ裁判官になりなさい

こんにちは、
半官半民の生活
あと5ヶ月足らずで
終わろうとしている
まこつです。



修習生を交えた
ある飲み会の席で、
こういう会話があった
と、思ってください。





hirame01.png





まず、
ヒラメ裁判官
という言葉の
もともとの出処から
説明が必要かもしれません。



もうかなり前、
ある年度の新任裁判官の
辞令交付式で
当時の最高裁長官が
以下のような訓示を垂れたという話が
一時話題になりました。





hirame02.png
(長官の訓示のイメージ)




信念を貫いたら
庁舎の壁も貫いて
外に出てしまったという
エピソードはさておき

伝えたい内容それ自体は
それなりに筋が通っているなと
思いました。


ビジネスシーン一般でも
上ばかり見て
仕事のクォリティが二の次になる人材

のことを「ヒラメ」と
呼ぶことがあります。


要するに先の長官は
「裁判官でもそのような
好ましからざる傾向があるやに
聞いているが」と釘をさしたわけです。



上の覚えばかり気にするということ。


そこには、当然、
出世欲だとか上昇志向だとか
それ単体で見ると
本来価値中立的な姿勢があって、
ただ、それが前に出すぎると
職責を果たせなくなる。

それを、「眼が上に付いてて
上しか見えないヒラメ」

なぞらえて話したのでしょう。




hirame03.png




長官の訓示に漂う、
「上手いこと言うたった」感が
少し気になりますが、
ヒラメ裁判官って
はたして悪いものでしょうか?

というお話です。


皆様、メモのご用意を。







まず、諸説ありますが
ヒラメは比較的
視力(静止視力)が弱い魚種で
人間で言うとかなりの近眼です。

だから、上を見ると言っても
そんなに高いところまでは
見えていない
という説が有力で、
これは実際のヒラメ狙いの釣りの手法にも
反映されています。


そのため、
上ばかりを気にする
上昇志向が強い
というイメージからは既に遠いわけです。


だいたい、
ヒラメのような
いわゆる底物の魚が
上のほう(水面近く)まで上がってくるときって
釣られて一生を終えるときですし。






hirame04.png





ところがその反面、
ヒラメは非常に動体視力がよい
魚でもあります。

その獰猛さもあって、
ヒラメの成魚の餌の9割以上が小魚です。
俊敏に泳いで近くに来た小魚を
(ヒラメなのに)華麗に捕食します。
ヒラメが典型的な
フィッシュイーターだといわれる所以です。


要するに、
ヒラメは上は
あんまり遠く(高く)まで
見えない
反面、
周囲の動くものに対しては
かなり敏感・機敏に反応する
のです。
ことヒラメに関する限り、
決して「周りが見えていない」
ということはありません






そのため、ヒラメ釣りでは
ルアーも
その動体視力にアピールしやすい
派手なカラーリングのものが
好まれます。








ところで、
カラフルなルアーって
可愛いですよね?
カバンにアクセサリーとして付けていたら
満員電車でステキな異性が
釣れる
かもしれません。



話を真面目な方向に戻します。

このような
視野と捕食行動の点は、
翻って考えると、
ヒラメ裁判官
視野狭窄に陥らず、
周囲の事情の変化にも機敏に対処できる
よい裁判官だ

ということに他なりません。





次。


ヒラメを語るときに
絶対に外せないのが
「ヒラメ40」です。


これは、要するに、
ヒラメ狙いの釣りでは
アタリが来てもすぐにアワセず、
ゆっくり1から40まで数えてから
アワセなさいよ
という重要な格言です。

フィッシュイーターである
ヒラメは口で小魚を捕らえても、
すぐには飲み込まず、
小魚が弱るのを待ってから
喰い直す習性があるからだと言われています。

「ああ小魚でなく弁護士でよかった」と
思わずにいられません。



このために、アタリのあと
すぐにアワセると
喰いが足りず、
バラしてしまうという難しさがあり、
反面、これがヒラメ釣りの
面白さの一つにもなっています。


この点を翻って考えると、
ヒラメ裁判官は
喰いやすいエサを
簡単に丸呑みしようとするのではなく、
主張と証拠を精査し、
慎重に判断するということであって、
要するに、注意深くかつ
思慮深いよい裁判官だ

ということに他なりません。



hirame05.png




その分、代理人サイドとしては、
簡単にアワセてバラしてしまう
ということがないように、
裁判官の理解度や
腑に落ちているかどうかを見極める
必要があるということですね。

さしづめ
「民事40」といったところでしょうか。
要するに、確実な勝訴を期するのであれば
訴状の受理から
少なくとも40日は見ておくべし

というわけです。


「だから訴状受理から
第1回期日指定までいつも
1ヶ月強はかかってるのか!」

皆さんが膝を打つ音が聞こえてくる、
そんな気が致します。





もう一つ、
ヒラメ裁判官という言葉は、
我々に、
民事の裁判官のあるべき姿について
一つの重要な示唆を与えてくれます。


すなわち、
いつも平坦な砂泥地に居場所を見つける
ヒラメよろしく、
ヒラメ裁判官は、
常にちょうどよい落ち着きどころを
見つける
という、
民事裁判官にとって、いや、
およそ民事紛争解決に携わる者にとって
最も重要な資質を備えているのだ
ということです。






hirame06.png





いかがでしたでしょうか?


ヒラメ裁判官の素晴らしさ、
分かっていただけましたか?



もちろん、この限られたスペースで
(といってもブログだから
書こうと思えば何万字でも書けるんだけど)
ヒラメ、ひいてはヒラメ裁判官の魅力の全てを
お伝えすることなど到底できるものではありません。


ですが、加えていくつか、
「ヒラメ裁判官たれ!」という
自説を支える根拠を提示しておきたいと思います。


・ヒラメはその体の構造上、
 あまり泳ぎが達者ではない
 →ヒラメ裁判官には組織内を
  上手く泳ぐといった発想がない


・ヒラメの裏側は白い
 →ヒラメ裁判官は腹黒くない

・ヒラメは大きな個体では1mを超える
 →ヒラメ裁判官は大物になる

・ヒラメは夜、活発に活動する
 →令状当番、自宅・官舎帰宅後の起案と
  精力的に仕事に励む

  (判決言い渡し期日前は特に)

・ヒラメは泥の中で活動する
 →ヒラメ裁判官は泥臭い仕事
  (裁判官室で同僚からお茶代を集めて回ったりとか)
  も厭わずこなす積極性がある



いかがでしょうか、
こうなると、梅雨明けの夏場、
水温が高くなる頃にヒラメの活性が下がることすら、
裁判所の夏季休廷との奇妙な符合のように
思えてくるから不思議です。


今、ここで一つだけ確実に言えるのは、
冒頭の訓示を垂れた最高裁長官は
おそらく釣りをしないのだろう
ということです。




最後に、もうひとつだけ
重要な視点を提供して終わりたいと思います。







hirame07.png





hirame08.png



もちろん世界的に見ると、
例外もあるのですが、
日本近海に生息するヒラメ・カレイに関して言えば
この左右のルールがほぼ当てはまります。


そして、ここで言いたいことは
すなわち、
「上に上りやすいのは、
左を見ているヒラメよりも、
むしろ右を見ているカレイではないか」

ということです。

ただ、諸般の事情により
この問題はこれ以上は踏み込みません。



みなさんも
ヒラメ裁判官の素晴らしさ、
分かっていただけましたか?









hirame09.png









今回の私の拙い文章と絵で、
一人でも多くの方が
ヒラメ釣りの魅力、奥深さ
気付いてくれたら
これほど嬉しいことはありません。





























hirame10.png

おしまい。




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プロフィール

弁護士中村真

Author:弁護士中村真
神戸の弁護士・中村真(なかむら・まこと)のBLOGです。
かつては複雑な法律問題などをわかりやすい絵で親切に解説しているつもりでしたが、最近はそうでもないです。当職が出資したクラウドファンディングはたいてい頓挫します。

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