【役立つ!】判決主文と登記手続のリンク

訴状での請求の趣旨を立てるときに気を使うのが登記に関する条項。

例えば、単純に「被告は原告に対し、〇〇につき、〇〇付〇〇を原因とする
〇〇登記手続をせよ。」といった、大抵の書式集に乗ってるような
分かりやすい請求内容ならそんなに問題はない。

ところが、今までやったことがなく、また登記先例集にも載ってないような
請求内容になる場合、
「どういう請求を立てたらいいのか」、
「仮に請求どおりの判決が出たとして実際に登記ができるのか(法務局が受理するか)」
という点には神経を尖らせておく必要がある。

というのも、こと登記手続請求に関しては
「一旦勝訴判決が出ても実際には登記ができず、
また訴訟のやり直しもきかず八方塞がり」

という状態になる可能性があるからだ。

そんなわけで、自分も修習中に大先輩弁護士から
「登記できない判決をもらうっていうのは
これ以上ないくらい明らかな弁護過誤だ」
と注意を受けたことがある。
また、「そのような八方塞がりに至る道の危険さを嗅ぎ分けるのも
弁護士の重要なスキルなんだ」とも。

touki-kan
もっとも「弁護過誤の危険性」というだけあって、
こんなバカげた事態は注意を働かせ、かつ必要な努力をすることで
十分に回避することができる。
つまり、請求を立てる前に管轄の法務局に出向いて、
登記官に「これで判決もらおうと思うんですけど、登記できますか?」
尋ねることが必要になる。

ここで、懇意にしている司法書士の先生に意見を聞いたり
代わりに法務局と折衝してもらうという方法もあるけれど、
自分自身が理解していないと法廷での釈明がなされた際に困るし、
なにより、このテの確認は伝聞になることで行き違いや趣旨の捉え間違いという
恐ろしいリスクを背負う
ことになる。
なので、基本的には自分で法務局に出向くのがスジだろうと思う。

この場合、重要なのが、
①「まず本局」ではなく必ず管轄が支局なら支局に出向くこと。
②確認をとった日時と面談した登記官の名前を確認しておくこと。

の2点が死活的に重要。

登記官は個々の独立性の強い官職なので、
処理困難な事案では、最終的には個々の登記官の判断ということになる。
そのため、本局の登記官は建前上支局よりも上級の庁であるけれども、
実際に登記申請を受ける管轄局(この場合、支局)の登記官の判断を尊重しがち。
なので、例えば姫路支局に管轄がある事件の相談を神戸本局の登記官に相談した場合、
一般的な回答や意見程度は述べてくれるかもしれないけれど、
必ず「姫路支局の登記官と必ず協議をしておいてほしい」と言われる。
支局の頭越しに、支局の事案について本局が判断・指示するということに
非常にナーバスに成っている印象がある。
だからの①。

あと、②は、要するに言質をとっておくということ。
つまり、事前協議に基づいて判決をとったのに、
いざ登記手続申請の段階になって「やっぱり受け付けられない」と
拒否されるのを防ぐため、OKを出した登記官の名前を確認しておくのだ。

このように、登記手続請求事件については、
法務局との事前協議を綿密に行なっておくことが肝要である。

実際には、登記できない主文の判決をもらったとしても、
判決の更正(民訴法257条)で対応出来る場合もある。
これは判決だけじゃなくて調停調書の場合もそう
(調停調書の更正は明文規定ないけど、解釈・運用上認められる。)。
で、更正が認められる範囲は比較的広いとされている。
(まぁ、広いか狭いかは主観の問題だけど、
自分で調べたときには思ってるより広いなという印象。)

ただ、「順次移転を前提とする登記手続を命じる主文」を
「中間省略の登記手続を命じる主文」に更正するなんてのは認められていないし、
更正の要件も十分に把握、理解しておく必要があるんじゃないかと思う。
いい弁護士になろうとするのであれば。

…一番いい弁護士は、もちろん更正のいらない判決を取る弁護士なんだけれども。

テーマ : 弁護士の仕事
ジャンル : 就職・お仕事

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

弁護士中村真

Author:弁護士中村真
神戸の弁護士・中村真(なかむら・まこと)のBLOGです。
かつては複雑な法律問題などをわかりやすい絵で親切に解説しているつもりでしたが、最近はそうでもないです。自宅マンションに鳩が来るのが悩みです。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR