重要な二つのスキル

この仕事をしていて、大切だなと感じるスキルが二つばかりあります。

一つは、待つという能力。
時期(時機)を待つ、事件の動きを待つ、依頼が来るのを待つ、といった感じ。
この「待つ」ということは簡単なようでいて意外と難しかったりするのです。

例えば、どんな事件でも、
成果が同じであれば処理に要する時間は短い方がいいに決まっています。

ただ、重要な情報や資料が調わないうちに、
また、きちんと体勢を調えきらない間に、
拙速に動いてしまったことで、致命的な事実の捉え間違い
主張ミスをしてしまうということも考えられます。

もちろん、保全や執行みたいに、
最低限のクオリティを保ってできるだけスピーディに
動かないといけない事件は別にして。

実は「すぐに事件を処理する」ということは
よっぽどめんどくさがりの弁護士でない限り、
「待つ」よりもずっと簡単な場合が多い、と思う。

で、この「待つ」という考えかたは
ふつう、依頼者側には無いことが多いので、
その分、専門家である弁護士のスキルとしては重要なのかなと思います。
特に時機を待つという点に関して。

待ちすぎて時効にかかっちゃったなんてのは、
スキルを問題にする以前のハナシですが。


もう一つの重要なスキルは、
「引き際」を見極める能力だと思います。

状況とか自分の側の立証の成否を適切に見極められずに
妥当な条件の和解案を蹴って
不利な判決を受けちゃうとか、
藪蛇的な主張で逆に不利な事実を露呈してしまったりとか。

だから、この「引き際」、
越えちゃならん一線がどこにあるのかを見極めるのが、
事件で最大限の利益を確保するコツなのかなと思ったりします。

kan01.jpg

この「待つ」と「引く」という二つのスキルの重要さを痛感するのは
反対尋問のときです。

特に事実関係に争いがあって、
「どっちかが嘘をついている」っていう事件では、
反対尋問の巧拙が事件の帰趨を左右したりってこともある。

ところが、若手の弁護士の尋問を聞いてたりすると、
尋問する相手の不自然な発言にすぐ飛びついてしまい、
その結果、相手に発言の撤回を許したりしてしまうケースが多いように思います。
これは、「待つ」ってのができなかった場合。
「もう少し泳がせてたらべらべら喋ったのになぁ」と感じる場合は多いです。

あと、どんな供述が出てくるかが事前に予測しきれない反対尋問では
この「引き際」を見極める能力が特に大切です。

民事事件では自分側に有利な事実ばかり
といった事件は滅多にありません。
(だから、紛争になるわけですが。)
また、依頼者が不利な事実を黙っていたり、
証拠上それが明確には現れてなかったりといった事情もあって、
尋問の中で自分の知らなかった
不利な事実がポロっと出てくる
なんてことも少なくありません。

そんなときにその質問を続けるか、
別の質問に移るかを慎重に、かつ素早く考えないといけない。
深入りしすぎて余計に不利になってしまった
というケースも結構多いんじゃないかと思う。

まぁ、この場合は、こちらが引いても
裁判官が補充質問で突っ込むことが多いわけですが…。

なんで、よく「裁判官を動かすリモコンがあればええのにな」と思います(そのくらいの心の余裕はある)。
そんなもんがあった日にゃあ「停止」連打ですよ。

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弁護士中村真

Author:弁護士中村真
神戸の弁護士・中村真(なかむら・まこと)のBLOGです。
かつては複雑な法律問題などをわかりやすい絵で親切に解説しているつもりでしたが、最近はそうでもないです。自宅マンションに鳩が来るのが悩みです。

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