国選弁護報酬の不正請求

昨日、日弁連の会長名義で各会員宛に
「国選弁護報酬の請求について(お願い)」という
fax文書が送信されてきました。
こういう風に、全会員宛に一斉にfaxが送られるということは結構あります。

で、その文書によると、
「日本司法支援センター(法テラス)の調査の結果、
153名225件の被疑者国選弁護報酬の過大請求が判明した」
ということです。

法テラスの業務開始前と異なり、
今の被疑者・被告人国選事件では、
起訴前の接見回数や公判期日の回数で
報酬が加算される
というシステムになっています。

で、どの世界にもパイオニアはいるもので、
「公判期日の回数なんかは記録上明らかになるからアレやけど、
警察署への接見回数はそうそう調べんやろうから、
実際より多く書いて請求してもわかんねぇだろう」

って考えて、さっそくバカみたいに接見回数を水増しして不正請求した
痴れ者の弁護士が岡山にいました。

年齢的に結構ベテランの弁護士だったようですが、伝え聞いた話では、
「接見回数で報酬が増額されるとは夢にも思わなかった」的な
弁解をしていたと聞いています。
この点でもある意味弁護士として抜きん出ている印象があります。

そしてこの不正請求事件が発覚して以降、
法テラスと各都道府県警察とが接見回数水増し防止のために協議しました。
その結果、毎回、警察署や拘置所での接見ごとに、
接見申込書と複写式の「接見資料用紙」なるもんを
施設側が弁護人に交付し、その資料を被疑者国選弁護報酬請求の際に添付させる
っていうシステムが後付けで作られました。
まじめにやっている大多数の弁護士や警察署、拘置所員からすれば
本当に面倒で迷惑な話です。

それなのに、その後も先に書いたような
実態に反する請求が多数行われていたということにちょっと驚きました。
「接見資料用紙」を偽造するなんて難しそうやしどうやったんやろう…。
公判回数なら簡単に嘘つけそうだけどその分ばれやすいしね。
「不正請求」ではなく「過大請求」とは書いてあるけど、
請求手続上は金額ではなく単なる処理結果の「事実」を報告するわけだから、
業務処理結果自体を偽って申告した可能性が高いと思われます。
(中学のときの担任が、
「嘘の中で最も悪いのは自分をよく見せるためにつく嘘だ」
と言っていたような気がします。
言ってなかったかもしれません。)

まぁ、不正請求自体はほんとに馬鹿げた行為なわけで、
みんなそれなりの処分を受ければいいと思うわけですが、
それとは別の部分で、法テラスの評価方法に疑問も無いではありません。

というのも、接見回数や公判回数を弁護士業務の成果を計る指標とすることに
結構な違和感があるからです。
このシステムで報酬を上げようとしたら、
必要なくても連日警察署に通って接見すればいいことになります。
しかし、その結果、回数稼ぎのためだけの不必要な接見が繰り返され、
留置係の事務処理負担が大きくなるほか、
ただでさえ少ない接見室が埋まってしまう機会が多くなり、
本当に必要な緊急の接見が阻害されてしまうことになってしまうわけです。

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その一方で、起訴後の接見は何百回行っても
原則として報酬には反映されないシステムなので、
起訴後はぱったりと接見をやめてしまう弁護士というのが出てくる。
被告人としては「あら?お見限り?何か怒らせるようなことしたかしら?」と不安になるよね。

自分の事件でも考えさせられる件がありました。
非常に追起訴の多い案件で被疑者国選から受任したんですが、
最初に起訴されたあとは、
追起訴分(余罪)の取り調べが起訴後の勾留を利用して続けられたため、
結局「被疑者勾留の状態がない」として、
10回近くに及んだ起訴後の接見は全く報酬算定上評価されないこととなってしまいました。

別件の起訴後勾留を利用した逮捕を経ない取り調べにも
実質的に問題があると思われる事案だったので、
担当検事に取り調べ方法等に関する申し入れ等も行いましたが改善されず。

追起訴分の方が事案が複雑で(事件としては傷害→公的給付の詐欺という流れ)、
被告人(被疑者)との打ち合わせ回数も多かったので、
自分としては非常に不公平感の残る案件になりました。

ちなみに、今回の日弁連の通知書面でも
「国選弁護報酬は、労力に応じた報酬基準という考え方を新たに導入し、
弁護士自身の報告に基づく接見回数や公判回数等を基に支払われてきました。(キリッ」

とありますが、「労力に応じた」っていう点で接見回数を問題にするんであれば、
起訴前、起訴後を問う必要はないはずです。

このように、接見回数という業務内容の実質とはさほど相関しない要素を
報酬額決定の指標にする割に、
ほとんど大多数の事件では刑事記録の謄写費用も認められない(報酬から支弁しないといけない)
という辺りが、国選弁護報酬算定制度のもつ最もいびつな面じゃないかと思います。
これは被疑者国選が始まる前から弁護士会が言い続けて来たことですが…。

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神戸の弁護士・中村真(なかむら・まこと)のBLOGです。
かつては複雑な法律問題などをわかりやすい絵で親切に解説しているつもりでしたが、最近はそうでもないです。自宅マンションに鳩が来るのが悩みです。

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