工場出荷状態の弁護士

どんな仕事もそうだと思うけれど、
それ相応の仕事ができるようになるためには、
ある程度の知識経験が必要になると思うんですよ。

これを弁護士に言い換えると、
知識ってのは法制度や判例、実務の運用などの専門的知識であり、
経験っていうのは事件処理によって蓄積されたさまざまなノウハウ、
つまり、事件の見通しの立て方やネゴの手法、依頼者対応の仕方だとかいった
さまざまな生の経験
がこれにあたるんじゃないかと思います。

このうち「専門的知識」ってのは
(まだまだ不十分ではあるものの)司法修習を終えることによって
一応は身について出てくるというタテマエでした(少なくとも数年くらい前までは)。

で、このままではやっぱり弁護士として十分な成果を上げることは困難なので、
結局、登録後、実務の中で先輩弁護士の指導を受けて
身につけていくっていうことが重要になるわけです(これも、少なくとも数年くらい前までは)。

よく思うことなんですが、
パソコンで例えると、新規登録弁護士は工場出荷状態のバンドルソフトのないマシン
これからアプリケーションをどんどん加えていかなきゃならないっていうイメージです。
最近はOSすらインストールされてないのもいたりするけど…。

「弁護修習があるじゃないか」と思う人もいるかもしれないけど、
たった2ヶ月間足らずの修習期間で実務的な経験を身につけられるかというと、
これはムリです。私も指導担当になっていますが本当にそう感じます。
法科大学院のエクスターンシップも同じ。

baby.jpg

ところが、近年、司法試験の合格者増によって
弁護士自体の数が爆発的に増えてきたため、
十分なOJTの機会が無くなってきています。
つまり、新規登録弁護士の就職の場がなく、
そういう人たちの中にはやむを得ずソクドク(登録後、即独立すること)
という険しい道を選ぶ人も出てきます。

しかし、
どの仕事もそうだけど「知らなきゃできない」ってことがよくあって、
特に弁護士の仕事の上では、
この「知らなかったために生じたミス」が
ときに依頼者に対して重大な結果を引き起こしたりします。

合格直後から「弁護士は、知らなかったでは済まされない仕事だ」ってことは
嫌っちゅうくらい聞かされるんですがね…。

「先輩弁護士が指導に当たればいいじゃないか」
って声も聞こえてきそうですが、
同じ事務所でもない限り、守秘義務や報酬分配のややこしさ、
依頼者への説明の難しさ等の問題があるため実際は現実的ではありません。
もちろん、弁護士急増により
どの弁護士も多かれ少なかれ「自分の利益の確保」という点を
意識せざるを得なくなっているという事情もあります。

このため、裁判所と弁護士会で行われる破産管財人協議会でも
「先輩弁護士が後輩弁護士とともに管財人業務に当たり
後進を育成するというシステムが考えられないか」という提案が
(主に裁判所側から)なされることがありますが、
「なかなか難しいよね」という話で終わることが多いんですよね。

結局、無理強いしてもできることとできないことがあるわけで、
今の弁護士急増の点を見直すしかないんじゃないかなんて考えたりもしています。

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テーマ : 弁護士の仕事
ジャンル : 就職・お仕事

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弁護士中村真

Author:弁護士中村真
神戸の弁護士・中村真(なかむら・まこと)のBLOGです。
かつては複雑な法律問題などをわかりやすい絵で親切に解説しているつもりでしたが、最近はそうでもないです。自宅マンションに鳩が来るのが悩みです。

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