【役立つ!】相続財産管理人不在の場合の訴訟提起

訴訟を提起したいが、本来相手方とすべき人物がもう死んでしまっているという場合。

相続人がいるときには当然、
相続関係調査の上、相続人に対して訴訟提起すればいいだけのこと。
ところが、相続人がいない場合や相続人が全員相続放棄(民法938条)しているときは?

まず考えられるのが、
相続財産管理人の選任申立(民法952条)
ところが、これは予納金の額も比較的高くなるし(だいたい20~30万円くらい?)、
申立手続自体も結構面倒。
しかも、相続財産管理人選任申立事件自体、
法律上どう頑張っても6ヶ月以内には終わらない手続なので
訴訟とその後の処理(弁済・執行による回収等)もスムーズ・迅速にいかない可能性がある。

なにより、こちらとしては訴訟したいだけなのに、
被相続人本人の資産・負債関係を調査の上、
その処理を任せる管理人選任を申し立てるっていうのが
いかにも不合理な感じがします(俺だけかもしれませんが)。

そこで考えられるのが、特別代理人(民事訴訟法35条1項)の規定で対応できないかってこと。

仮にこれが可能であれば、
相続財産管理人選任の場合よりは低い予納金額(10~20万円くらい?)で対応可能だし、
あくまでその訴訟に関する代理人選任なので円滑・迅速な進捗も期待できる。

もう一つの利点は、
特別代理人の方が訴訟がスムーズに進みやすいってこと。
なぜか?
相続財産管理人と違って、その事件にスポットで選任されてる特代の方が
被相続人に関する情報が圧倒的に少ないので、認否も「不知」が多くなるから。
このことは副次的な要素に過ぎないけど…。

tokudai.jpg

ただ、「本人死亡してるのに『代理人』
っていう概念が成り立ちうるの?」
っていう疑問は当然ある。
(実はこの視点は非常に重要。この疑問がもてないと法律家じゃない。)

ところが、相続人不存在(あるか否か不明の場合も含む。)のときは
相続財産は「相続財産法人」っていう法人格が与えられることになる(民法951条)。
つまり、被相続人自身は死亡してるけれども、「本人」に当たる相続財産法人がいるので
法理論的にも代理人の選任ということが観念できるわけだ。

で、特別代理人の話に戻るけれども、
結論から言うと、明文規定はないものの、
「相続人不明の相続財産」について相続財産管理人がいない場合にも
この特別代理人(民訴35条1項)の規定は準用される

実はそういう大審院決定がある(大審院昭和5年6月28日決定・民集9-640)。

この大決は大抵の判例六法の民訴35条には挙げられてて、
ハデさはないが持ち前の汎用性で弁護士をアシストする縁の下の力持ち的裁判例といえます。

あと、さっきの「視点」の問題。
要するに「相続人不明の相続財産は『相続財産法人』っていう一種の法人」なわけ。
これは相続財産管理人が選任されていると否とにかかわらない。
なので、仮に相続財産管理人が選任されている事案で
被相続人に対して有していた請求権を内容とする訴訟を提起する場合でも
「被告 亡△△△△相続財産管理人○○○○」とするのは誤りで、
あくまでも「被告 亡△△△△相続財産」とするのが正しい。

相続財産管理人が選任されている場合の訴訟提起の際に、
民事部の書記官がうんざりしながら原告代理人に当事者目録の補正を
促している場面はよく見かける光景です。
(自分も一回やってしまったクチです。二度目はありません。
書記官がよく判ってない方の場合、そのまま判決出たりするしね。
この判決、そのままじゃ執行できないような気がするんだけれど…。
こわい話ですよ、ほんとに。

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